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少年の鳥が歌うような声に、銀次はニッコリと言葉を返したが、生まれてこのかた、銀次は約束を守った事がない。
持ち前の明るく親しみのある笑顔で「今度払う」「今度返す」と約束をしてツケやお金の無心をしては、限界に達した所でその村から去っていく。
放浪した先でまたそれを繰り返した。
そして今回も同様に山深くの村に潜り込もうとしたのだが、信心深いその集落は余所者を受け付けないどころか、問答無用で銀次を大木に縛り付けたのである。
「じゃあ、一緒に遊んでくれる?」
「もちろんさ。君がこの縄を解いてくれたらね」
少年はすぐに縄を解き、自由になった銀次は身体をグッと伸ばした。
「それで、君はさっき何を歌っていたんだい?」
「あの子が消えたって事を歌っていたんだ。あの子がいないままだとみんな死んじゃうんだよ」
「あの子ってのは誰なんだい?」
「あの子はあの子だよ」
「そうかい、アノコかい」
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