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銀次の問いに少年は何の迷いも躊躇も無く返す。物騒な話が出ても、少年に不安な様子はないので、銀次も適当に相づちを打つ。
少年が歩き出したので、銀次はとりあえず付いていく。
「俺は銀次。君の名前は?」
「名前?」
「そうさ、名前だよ」
「僕は僕だよ?」
「もちろん、君は君さ。でも名前があるはずだよ。名前っていうのは、存在を表す大事な物なんだから」
少年はまた小首を傾げて、悩まし気な唸り声を立てるが、答えは見つからなかった。
「僕は僕だよ」
「そうかい。じゃあ、ボクと呼ぶよ」
「うん」
「ボクの家はどこにあるの?」
「そこさ」
「そこってどこだい?」
「そこはそこだよ」
全く会話にならないが、銀次は一切の苛立ちを見せずに話を続ける。
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