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また襲いかかってきた村人達から、銀次は必死に逃げ出した。
何とか山道に飛び出せば、危うく馬車に轢かれかける。
ギリギリ目の前で馬車は止まり、銀次は馬車を操っていた商人に縋り付いた。
「た、助けてくれ!助けてくれたら何でもする!逃げなきゃ、神への供物にされちまう!」
「落ち着け!」
「落ち着いていられるか!奴達はすぐそこまで……」
銀次は自分が駆けてきた山を振り返る。
しかし、そこには誰もいない。
「あんた、旅の者か。この山は神隠しの山さ。この山に入って出てこれるとは、幸運だな」
「ああ、幸運だ。逃げた先でアンタにも出会えたんだからなぁ。俺は銀次。アンタの名は?次の村まで連れてってくれたらお礼に何でもするよ。約束だ」
銀次は荷馬車に乗せてもらい、山向こうの村へと向かっていく。
銀次は生まれてこのかた約束を守った事がない。
それはこれからも変わらない。
(了)
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