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来る義理はない。
……とは思った。
でも、気になって仕方がなくて、結局来てしまった。
今日もウサギくんの方が先に来ていて、やっぱりブランコに乗っているのが遠くからでもわかった。
月明かりに浮かぶウサギくんのシルエットは、何故か寂しげに見えて、こっちまで切なくなった。
「……来てくれたんですね。」
静かに近寄っていったら、気配を感じたのか、ウサギくんが顔を上げてそう言う。
「来るように言ったのは、そっちだよね。」
私は、また隣のブランコに腰をかけた。
「律儀ですね。月のお姉さんは。」
ウサギくんは、笑ったけど、力のない笑いだった。
元気ないね……なんて声を掛けるほど、私はウサギくんを知らない。
これが普通ですよ、と言われるだけかもしれない。
とりあえず、黙っていることにした。
「月のお姉さんは、結婚してないんですか?」
ウサギくんが、唐突に聞いてくる。
妙齢のよくも知らない女性に、それを聞くかと思いながら、苦笑する。
「あっ……と……。すみません。失礼か。」
ウサギくんは、空気を読むのは得意らしい。
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