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ウサギくんは、淡々と話し続ける。
私の存在すら、意識できているかわからなかった。
「おととい、バイト終わって自分のスマホ見たら、ものすごい数の着信があって。
……父さんからだったんですけど、そんなこと今までなくて。
折り返してみたら、母さんが倒れたって。」
思いもよらない話に、私は息を飲む。
おとといって……。
「着替えもせずにバイト先を飛び出したんですけど、走りながら、今さら母さんにどうやって顔合わすんだ?って思ったら、足が止まりました。
そして、ここにいてぼんやりしてたら、月のお姉さんが来ました。」
ウサギくんは、そう話すと、私に視線を移した。
「お母さんの容態は?」
「くも膜下出血で意識不明。
……っていうか、いつ死んでもおかしくない危篤状態だって聞いてます。」
私はごくりと唾を飲んだ。
「……会いに行ったの?」
ウサギくんは、静かに首を振った。
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