3人が本棚に入れています
本棚に追加
その1
最近、友達の#小池琢磨__こいけたくま__#から小説を借りる事になった。
タイトルは、
「いきなり魔王に転生…(略)…」
「僕ら転生冒険者でしかも…(略)…」
「悪役令嬢婚約破棄して…(略)…」
「婚約破棄した令嬢が…(略)…」
今、流行りだという事で、読むようにという事だった。
今日から、高校生になって、最初の夏休みだ。学校という牢獄から解放され、自由な時間。
この夏休み、暇も多いだろうし、友達の熱いお勧めの本だ、読んでみるか、という事で、さっそく読み始めた。
その前に、丸テーブルの上にあるオレンジジュースを一口。ごくん、おいしい。
現代の生活から抜け出し、幻想世界へ、生まれ変わる…?
転生、か。
そうしたら、魔王になっていた、か。
まぁ、いいだろう。
あまり毒のない魔王…になりそうだな。
恋愛も絡むんだな…。
苦労もありそうだが、楽しそうだな。魔王か。
でも、俺は人生をやり直すのなら、そうだなぁ、幻想世界でなら…
「勇者よ、起きてください…」
体を揺さぶられ、意識を朦朧とさせながらも、俺は何とか返事をした。
「勇者よ、ついに旅立ちの時が来ましたぞ?」
俺は気の抜けた声を出し、話しかけた男の方に目を向ける。目が霞むな。
まだ起きたばかりなのか、体がフラフラする。
しかしこいつ、背が高いな、高層ビルを見上げる感じになっているけど、大丈夫か?
あぁ、足がしっかり立ってくれない。何か自分の足じゃないみたいだ。
しかし、俺の足小さくないか?これが高校生の足かっていうくらいに。
赤ちゃんみたいだな。
「勇者よ、これが剣と鎧です。さぁ、身につけて下され」
神父みたいな格好したおじいさんに言われた。首にロザリオしてる。
ところで、勇者って、俺の事か?この神父みたいなおじいさん、年季の入った顔をしているが、中々精神病院お手上げの、厳しい発想をお持ちの様だな。
「お前、誰でちゅか…?」
あれ、俺の声が変だ。
「ばぶばぶ…」
あ、この言葉は、わざと言いました、ごめんなさい。
しかし、ばぶばぶは、言いやすかった。いや、何が言いやすかっただ。高校生が、社会と一撃で隔離される様なきついコメントを思い浮かべては、まずい。
「鏡を…」
何とか、言えた。
「どうぞ、勇者よ」
神父らしき、おじいさんは、手鏡を持って来てくれた。
「うーん…。ありがちょ」
自分の顔を見て、絶望した。不細工だからじゃない。不細工と、思った事はない。顔が、赤ちゃんみたいだからだ。
「2、3才くらいでちゅ…」
そう、あまりの絶望に、俺は溜め息を漏らしながら、言った。
何でこんな事になった?
何故…
あ!これは、夢なんだな。
借りた小説を読んでいたせいで、こんな夢を見ているんだ。
よし、もう一度、寝る事にしよう。
しかし、夢とはいえ、このキチガイ神父も、2、3才の幼児に、剣と鎧身につけ、旅立てとか、よく言えたものだ。
お前が、あの世に旅立て。
最初のコメントを投稿しよう!