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「コハク、ここ、だいぶかわいいね」
「ん、ん、……っ」
うさぎのセックスは、普段の穏やかさとうってかわって攻撃的だった。
人を警戒させないにやにや笑いを顔にはりつかせて、寝癖のついた頭で、無理なわがままも容易に聞きいれてくれそうな男は、本当はとてもひどい男なのだ。
コハクはたくさんのことを、うさぎに抱かれることで理解してゆく。
自分自身の遊びと楽しみ、快楽を求める気持ちを優先させつつも、コハクの身体の声もちゃんときいて、その望みをすくいあげる。
うさぎは自分のものもコハクのものも区別せず、二人分の欲望を混ぜてどろどろにする。
あか抜けないタイプなのは見せかけだけ。その指遣いを感じれば、性的巧者であることがすぐにわかる。
昔コハクが軍のテントに収容されたとき、世話をしてくれた医療係の女兵士がいた。彼女は「ぜったい惚れちゃだめだからね。あいつに惚れても苦労するだけだから」とコハクに言った。
あれは、嫉妬だった。女兵士自身もうさぎと寝ていたのだ。
コハクがそんなことを考えている間も、うさぎは、コハクの身体を丁寧に、簡潔に開いていった。
まるで料理人が、適切な判断をくだした調理法で、魚をさばくような手つきだ。コハクは、美味みを最大限に引き出される食材になったような、刑を執行される供物にでもなったような気持ちで、うさぎの手に身を委ねる。
コハクはなにもかも、初めて暴かれるかのように、いちいち声をあげてしまう。
うさぎは、戸惑い涙ぐむコハクを「かわいい。もっとできる?」と煽りたて、コハクの身体のあらゆる箇所を、自分のものにしていく。
「いつもはこんなじゃない」
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