4、ニュー・ワールド

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 合意のうえの情事において、こんなに劣位にたたされたことなんてない。 「何を気にしているの。すべてが素敵だよ」  うさぎは一見不器用そうな、しかし何もかもわかっている長い指で、コハクの胸をいじり続ける。コハクの乳首は火照ったように腫れ、硬く勃起している。それをつまみ、舐め、さらにいっそう尖らせるように、うさぎは吸ってくる。おまけにコハクがどんな顔をしているか時々確認してくる。それを怒ると、「眼鏡かけていい?」とぬけぬけときいてきた。 「眼鏡、修理に出してるんじゃ」 「とっくに終わってる。でも君をはっきり見ないようにと思ってつけなかった。……今かけたら怒る?」 「怒る」 「残念。乱れる君をじっくり見たいのに」  うさぎはシャツを脱いで、上半身裸になった。さえない印象の男が、別人のようだ。鍛え抜かれた身体にコハクは抗議する。 「ずるい……」 「あー……、一応軍にいるからね」 「猫背で騙した」 「姿勢の悪さは訓練でも矯正できなかった」  うさぎは軍配給の認証マークがついたコンドームの封をあけて、指につけた。  察したコハクは、小さなプラスチックパッケージをとりだした。コハクの肌や体質となじむ処方のもので、ちょうどいい手の平大の分量が安全に真空包装されている。それを歯で開けて手にとった。 「口にしても大丈夫なやつだから」  いかにも慣れているという感じの、すれた風に言い、うさぎの指になすりつける。 「味見をしろって意味?」  うさぎは口元だけで笑う。意地の悪い笑い方だ。頬がカッと熱くなり、余計なことを言ったと後悔した。  うさぎはコハクの脚の間をしげしげとのぞきこむ。 「とてもすっきりしてる。いつもそうしてるの?」 「……別に。時々邪魔になって手入れしているだけ、みんな好きだっていうよ」  また一笑にふされると思った。しかしうさぎは意外にも不機嫌をにじませた。 「そんなこと言われると、嫉妬する」 「……」  予想外の反応に言葉をなくす。  真顔のままうさぎは、コハクの髪を指にからめた。コハクの目を見ながら一筋、口にふくんだ。 「何す……」  うさぎはコハクの髪を口からだすと、「いつも柔らかくて甘そうでキラキラしてて、食えるかなって。でもさすがに無理だね」と笑った。  毛先がうさぎの唾液でぬれそぼっている。感覚のないはずの毛先がじんじんと熱をもつ。  コハクは泣きそうになった。
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