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望まない恋愛
俺は足早に学校へ戻り、静かに職員室へ向かう。
「あっ、橘柳先生だ!」
「ほんとだっ、話しかける?」
「どうしよっかなぁ......ちょっと怖いから...でもカッコいいなぁ」
廊下で向かいから歩いてくる女子生徒の話し声が聞こえてくる。こっそり話しているつもりなのか?
俺は何事も無いようにすれ違い、挨拶する。話したそうにこちらを見られるが、気付かない振りをして通りすぎた。
「やっぱ話しかけらんなかったぁ」
「仕方ないよ、次頑張ろ!やばっ、予鈴鳴ったから急ご!」
女子たちはそういって楽しそうに教室へ駆けていった。
(勉強を頑張ってほしいのだが)
内心あきれながら自席へ戻り、テキストをもって授業教室へ。
着いてから俺が入ると、散っていた生徒が俊敏に自席へ着き、ちょうど本令が鳴る。
「授業を始める。起立」
ガタガタっと生徒は各々に椅子を引いて立ち、礼をした。適当な者もいれば、お願いしますと言いながら真面目に礼をする者もいる。
「じゃあ予習したプリントを出して。マーカーと赤ペンを用意するように」
ちなみに俺は現代文担当の高校教師だ。
大体こういうとき真面目な生徒はすでに出してある。俺の場合、俺目当てに真面目に受けるやつが居るから正しくは判定できないが。
1.5の視力でプリントをざっと見渡す。俺の授業は容赦ないことで有名だから比較的皆真面目になる方だが、予習をしてこないやつもいる。
そういうやつに俺は一言も注意しない。そういう性分だ。
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