3人が本棚に入れています
本棚に追加
3
手始めに職場の机から始めた。
書類の山が机の両端を埋め尽くしており、遠くから机を見ると山と山に挟まれた谷のように見える。職場では私の机に行くことをハイキングと呼んでいるやつもいるくらい書類が積み重なっている。
これまではそれらの書類を邪魔だとは考えたこともなかった。しかし、シンプルの魔力に魅了された私はあの時、自分の仕事机を見て眉間にシワを寄せた。
まずは書類の中身を見て、必要なものと不要なもの、2つのボックスに分けた。作業を始めると気がついたが、不要な書類の方に圧倒的に書類が溜まっていく。必要な書類はせいぜい書類の上から数枚程度だった。それ以外はもう使わなくなった紙くずなのだ。
使うだろうと思っていたものが、ゴミだということを知って少しショックを受けたが、それと同時に本当に必要なものは数えるほどしかないんだと学んだ。
一時間後には机は綺麗に片付き、山は今では整地された道となっていた。通りかかった同僚たちは目を見開いて驚き、机を何度も見物しにきた。
机を綺麗にしてからのロバートの働きぶりは目を見張るものがあった。
今までは真面目だが、冴えない40代の男だったが、机を片付けて一ヶ月後には営業のトップセールスにまで上り詰めていた。
机が書類で埋まっていた時は、次に何をやればいいのか皆目見当がつかなかったが、今では次に何をするべきかが手に取るようにわかる。キャリアも同様に見通しがついてきた。
今までほとんど話すことのなかった上司から、食事に誘われたり、社長から会議に呼ばれたりなど、このまま成績を保てば、いつか夢に見ていた役員になれるのもすぐなのではと淡い期待をよそに仕事に精を出した。選択肢が少なければ少ないほど、フォーカスできるようになるらしい。
最初のコメントを投稿しよう!