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私は普段の週末、平日の疲れから遅くまで寝ており、起きてからは何も考えずにテレビの前で過ごすというのが日課になっていた。
ジェームズが遊びにきても「お父さんは疲れてるから、あっちでママと遊びな」というのが常だ。かわいそうなジェームズ、これからはそんな悲しい思いはさせない。
ロバートの日常は変わりつつあった。必要のないことには手を出さないようになった彼は、テレビを見ることも昼過ぎまで寝ることもなくなった。週末は朝からジェームズや妻と出かけてリフレッシュをし、夕方からは仕事の効率を上げるために本を読んだ。
今までの人生を振り返ると無駄なことに相当の時間をつぎ込んできたことがわかる。意識を変えるだけで、これまで平凡に生きてきた人生が急に色づいた。それはまるで、モノクロの絵が急に色彩を得たかのようだった。息子と遊び、本を読んだロバートは久しぶりに心から充実した時間を過ごし、深く眠りに落ちていった。
オフィスに行き、自分の机を見ると、自分でさえ不思議な感覚がある。今までの汚かった机がこんなに綺麗になるものなのかと感心してしまった。
熱を持って仕事に取り込むようになってから、明らかに周囲の対応が変わり出した。以前は腫れ物に触るかのように波風を立てないように話しかけられてたが、今は気さくに話かけられるようになり、同僚とのコミュニケーションの機会も増えた。
思い返せば私は気が短かった。自分に対して不利なことや気にくわないことがあるとすぐに怒り出す。ガスを充満させた部屋に火をつけたかのように一瞬で爆発する。これが今までだったが、今では相手の意見を最後まで穏やかに聞き、的確なアドバイスができるようになった。それは意識したことではなく、やるべきことにフォーカスをした結果であった。それからは部下からの信頼も厚くなり、チーム一丸にプロジェクトを取り組むようになった。
そうすると、目をみはる成果が現れた。今までは常に最下位だった私のグループの成績が右肩上がりに上昇をし続け、半年後には会社の中でトップになった。社員のみんなは何が起こったのかわからなかったが、私には確かにわかっていた。ミニマルにシンプルに生きることが成功の鍵なのだと。人生を豊かにするには全てをシンプルにするしかないと反芻をするように何度も唱えた。
全てのことを限りなくシンプルにしようと決意した私は食べるものから変えていった。朝はビタミンやミネラルが効率よくシリアルを毎日食べるようにし、昼食は曜日ごとに食べるものを決めた。これで毎日何を食べるか考えていたあの煩わしい時間もなくなる。ただ決めた場所にいき、決まった物を口に運べばいい。
仕事もマニュアル化をした。どんな人がやってもある程度の成果が出るように工夫をし、能力の差に関係なく誰がやっても同じようにした。できる限りシンプルに誰でもできるようにを念頭に置いたのだ。もちろん場面場面で行動は異なるため、マニュアルは多少長くなったが、それらをイレギュラーを網羅することにより誰がやっても同じような成果が出るようになった。そのため、私の部下になると仕事ができるようになるという噂が社内で広がった。
期を追うごとに私の評価は上がっていき、ミニマリストになろうと思った日からちょうど一年経った時、会社に入った時から夢に見ていた役員になった。昇進を聞いたときは天にも昇る気分だった。シンプルさは最大の武器だと気がついたロバートは、物事の単純化を追求していった。
今までは紙や服などの物を捨て、シンプルさを手に入れていた。物もある限度を超えると取捨選択ができなくなる。つまり、追求すると必要なものだけが残り、それ以上は捨てられないのだ。それに気がついたロバートは不必要な考えを消していくようになった。どれが必要で不要かは、自分に問いかけるとわかってくる。理由を1から10まで考えれるものは必要でそれ以外は不要なのだ。そして人は、一人一人物事を考えるときにある一定の法則を所有している。Aを考えたら次はBを意識せずに考えてしまうような舗装された道があるのだ。これらはいつも同じような結論に考えを導いてしまう傾向が強い。それに気がついたロバートは自分の考えの癖を消すように努めた。
最初はなかなか上手くいかず、ムッとすることも多かったが何度も経験するうちに対処の仕方が掴めてきた。そのうち考えの癖はなくなり物事をバイアスなしに見れるようになってきた。そうすると物事を自分の視点だけでなく他社の視点から見れるようになる。つまり意見が2倍3倍になり、様々な角度から物事を見れるようになる。これはロバートが仕事をする上で大きな役に立った。
意見を求められたときに自分の意見だけでなく、他者の視点から物を言える。それだけでなく、自分の意見を主張するために他の視点の意見を使えるようになったのだ。ロジカルで厚みのある意見を常に出すロバートは役員になってからも蒸気が地面から空に昇っていくように評判を上げていった。
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