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私は準備室を出ると、廊下を走って下足場へと向かった。
なんだか涙が溢れてきそうになって、今は誰にも会いたくなかった。だからすぐに下足場でローファーに履き直すと、すぐに帰路に着いた。
家に着いて、私は家族と食事を済ませ、いつものように過ごしていたつもりだったけど、母が、「あんたなんか、体調悪そうだけど、大丈夫?」と、心配されてしまった。
私は大丈夫だと告げると、すぐにお風呂に入って、身体を温めた。
まだ、先生に拒まれたことが、心をチクチクと刺してくる。お風呂に入って湯船に沈んでいても、心のわだかまりを溶かしてはくれない。
確かに先生とは一回りも違う。私は今年でやっと十八歳になるし、先生からしたら、私なんてただの生徒で、子供でしかないと思う。
でも、私は霜田先生に出会って、先生の低い声を授業中聴いているだけで、先生の一挙手一投足に目が行って、他の授業では眠くなることが多いのに、先生の授業だけは胸が躍って眠気なんて来なかった。
むしろ、先生と同じ空間にいれることが、何より嬉しかった。
私はこんな強烈な恋に落ちたことはない。初恋と言っても過言ではない。
私にとって先生は、ただの先生ではない。でも、今日の答えで諦めなければいけないのか、これから個別授業もしてくれなくなるかもしれないし、顔も合わせ辛い。
私は嘆息すると、湯船に顔を埋めた。
しばらく顔を埋めて、呼吸が苦しくなったところで顔を上げると、もう、今日はこんなこと考えるのを止めよう、そう思った。
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