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門の前でじっと立っている人影は、どうやら男性のようだった。
月明かりで、逆光になっているその人の顔が陰になってしまっていたが、あの髪型に、あのシャツとジーンズ姿のほっそりとした人は、霜田先生だと思った。
……どうして、私の家の前にいるんだろう。
私は、さっきまで持っていたノートを抱き締めるようにして、窓から身を乗り出すと、その男性はきょろきょろと辺りを見渡して、それから、見上げた。
すると、月明かりが見上げた顔にさっと差し込み、くっきりと先生の柔和な顔立ちが現れた。
それから私が先生を見つけて、先生の方を見ているのが分かったのか、先生は私に手を振った。
私は、胸の高まりを抑えきれずに、「先生」と小さく声を漏らした。
その声はどうやら先生にも届いたようで、首を九十度に上げて私の方を見る先生は、手を振るのを止めると、なにやらカバンから取り出した。
そして、その何かを私が見えるように少し上に翳すと、門に付いているポストにそれを入れた。
遠くからだったからしっかり見れなかったけれど、あれは紙のようなものだった。
先生はポストにそれを入れたあと、もう一度私の方を見上げると、そのまま帰って行ってしまった。
私は、途端、先生のあとを追いかけたくなって、部屋を出て玄関まで走った。
玄関を開けて、サンダルを素早く履くと、門の方へ向かい、ポストの中身を見た。
すると、そこには白い封筒に入った、一通の手紙があった。
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