君と僕のわるいくせ

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封筒にはさみを入れて 丁寧に中を覗くと 綺麗に折り畳まれた便箋が一枚 君らしいな、と 思いながら取り出すと そこからかすかに 君のつけていた香水の 香りがした 手紙には忘れてほしいと 自分のことなどなかったことにして欲しいと そういったことが書かれていたけれど それならどうして それからどうして こんな風に抜け殻を残そうとしたの 形あるものを残していくのは 忘れてほしくないからじゃないのかい 君は昔から 本音を隠すところがあって 僕は昔から 真実から逃げる癖があった 君からの手紙をこれだけ時が経ってからやっと 開けることができたのは あの時の僕のまわりに はさみがなかったからなんだよ
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