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1.猫を愛する男と猫に愛される男
真冬の夜、会社帰りに猫を見つけた。
猫を見ると、つい後を追いかけてしまう。
人間に対しては一度も抱いたことのない強い欲望が、俺をストーカーにするのだ。
触りたい。
せめて声を聞きたい。
その欲望が満たされなくても、姿を見られただけでラッキーだし、猫に誘われなければ来ることのない場所に辿り着けることもある。
キジトラに白の混じった雄だ。
あの柄は人懐っこい子が多い。
期待しつつも慎重に、俺は彼との距離を縮めていった。
あ、振り向いた。
まずい、ちょっと早足になった。
足音に注意してこっちも早足で追いかけて行くと、公園に出た。
キジ白くんは植込みに入って行った。
静かに座って覗き込むと口元が三角に白い可愛い顔が見えた。
「おいで」
手を出してみる。
逃げないけどじっと見てるだけだ。
「おいでよ」
あ、今ちょっとニャアって言った。
あー可愛い。もう一息だ。
「ねえ遊ばない?」
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