1.猫を愛する男と猫に愛される男

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「ご馳走様でした。お休みなさい」 「ああ、お休み」 「行くよ、ノアール」 ニャーと甘えた返事をして、ノアールは当然のように奴について行った。 えー、いつも俺の布団の上で寝るのに。 嘘だろ、俺今日独りで寝るの? 恨めしそうに背中を見ていると、奴は思い出したように振り返った。 「あ、ねえ、ハッテン場って知ってる?」 「8点バー?」 なんだそれ。アイスの当たりクジか? キョトンとしてると、奴はフッと笑った。 「あの公園、近づかない方がいいよ。駅からの近道だけどあっち通るなって言われてたと思うけど?」 ああ、確かに住み始めた頃、マコさんに言われた。 夜は結構治安悪いから大通りを使えって。 「え……おまえは注意されてたのに敢えてあの道通って来たってことか?」 「うん。だって実際大丈夫だったじゃん。じゃあお休み」 頭来た。 つまり大丈夫じゃなかった俺は弱いってことか。 ツヨシじゃなくてヨワシじゃん。 全国のひ弱なツヨシくんが一度は言われるムカつく言葉。
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