最終章 猫と小鳥と恋人たち

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ああ、慧治か。ノアールも一緒だ。 「タツヤさんがいない。ポタージュ――小鳥もいないし、家具もない」 慧治は頷くと、隣の家のインターホンを押した。すると大家さんが出てきて、タツヤさんとポタージュの消息を教えてくれた。 「今朝引っ越したわよ。あなた達、知り合い?」 「はい。近所に住んでて時々部屋に招いていただいてたんですけど――」 「あらそう、近所にお住まいなの。だったらちょっとお願いしていいかしら」 一度家の中に戻って再び出てきた家主さんは、空の鳥カゴを手にしていた。 「引っ越し準備でバタバタしてたら、小鳥が逃げちゃったんですって。もし戻って来たら連絡してくれないかってこれを預かったんだけど――」 え、逃げた? ポタージュ、外にいるの? 「それ、俺が預かります! 慧治!」 慧治が鳥カゴを受け取って家主に礼を言って戻ってくる間に、俺は扉を閉めて階段を降りた。 「おい、慧治――」 「あの子探すんだろ。了解」 だけど一体何処を探したらいいんだろう。全く見当が付かない。 「ポタージュ!」 呼んでみたけど、返事はない。 仕方なく電線や街路樹を見上げながら歩き始めた。
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