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そして更に時が流れて、春になった。
桜咲く日曜日の午後。
去年台風の影響で秋に狂い咲きしてたから心配したけれど、今年の桜も綺麗だ。慧治は、その深刻化する台風に的を絞ったプロジェクトに参加して研究に没頭する日々の中、俺を愛し続けてくれている。
「わあ、綺麗だね」
桜を褒めてるのか俺を褒めてるのかわかんない位、密着して囁かれた耳が熱い。
「バカ、窓の前で抱きつくな」
「いいじゃん、たまにはバカにならせてよ」
「ちょっ、バカ、まじバカ――ん!」
間一髪で障子を閉めた所でキスを受け止めると、陽気な声が聞こえてきた。
アラン アイシテル アイラブユ ジュテーム ティアーモ
「慧治、ポタージュに変な言葉教えたな!?」
「変じゃないよ。愛の言葉だよ。俺がいない時にアランが寂しくならないように、代理をお願いした」
アラン ジュテーム
「ほら上手いでしょ。ポタージュはフランス語がお気に入りみたい」
ポタージュは、今では会話が成立しているように聞こえる位、言葉を覚えている。オハヨウもオヤスミもオカエリも言える。
一番沢山言うのは――
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