1.猫を愛する男と猫に愛される男

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今はそうでもないけど? 普通だけど? おまえ来なくても独りで逃げられたぜ? って頭の中で叫んだら、腕を掴んだ奴の手の感触が蘇ってきた。 無茶苦茶強かった。 それで必死に走って行ったけど、あれって―― あいつ、実は怖かったんじゃないか? 危ないわよって言われてて、平気平気って行ってみたら実際に不審者に絡まれてる俺見てさ。 なーんだ、そうか。強がってただけか。 まあ指摘しないでおいてやろう。これで借りはチャラだ。 仕切り直して食事を終えて、少し仕事をしてから風呂で温まって2階に上がった。 静かだ。 もう寝たか? でも部屋の襖が少し開いていて明かりが漏れている。 あいつまだ勉強してるのか? 「おい、もう寝――」 奴は布団に入っていたが、参考書を手にしたまま寝落ちしていた。ノアールもその腕に収まって寝息を立てている。 そっと近づいて本を取っても奴は目を閉じたままだった。 睫毛長いな。てかフサフサ。ノアールの尻尾みたい。 悔しいけどお似合いだ。 端正な横顔を付き合わせて眠っている奴とノアールを起こしてしまわないように静かに明かりを消して部屋を出た。
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