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今はそうでもないけど?
普通だけど?
おまえ来なくても独りで逃げられたぜ?
って頭の中で叫んだら、腕を掴んだ奴の手の感触が蘇ってきた。
無茶苦茶強かった。
それで必死に走って行ったけど、あれって――
あいつ、実は怖かったんじゃないか?
危ないわよって言われてて、平気平気って行ってみたら実際に不審者に絡まれてる俺見てさ。
なーんだ、そうか。強がってただけか。
まあ指摘しないでおいてやろう。これで借りはチャラだ。
仕切り直して食事を終えて、少し仕事をしてから風呂で温まって2階に上がった。
静かだ。
もう寝たか?
でも部屋の襖が少し開いていて明かりが漏れている。
あいつまだ勉強してるのか?
「おい、もう寝――」
奴は布団に入っていたが、参考書を手にしたまま寝落ちしていた。ノアールもその腕に収まって寝息を立てている。
そっと近づいて本を取っても奴は目を閉じたままだった。
睫毛長いな。てかフサフサ。ノアールの尻尾みたい。
悔しいけどお似合いだ。
端正な横顔を付き合わせて眠っている奴とノアールを起こしてしまわないように静かに明かりを消して部屋を出た。
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