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翌朝、珍しい音で目覚めた。
トントントン、という包丁とまな板の音だ。
時計を見ると、まだ6時半だった。
マコさんがこんなに早く店に来ることはない。
でもあいつが心配で来ちゃったのかなと思って障子を開けると、雪が降っていた。
俺も今日はいつもより早く出掛けた方が良さそうだ。
着替えて下に降りる前に隣の部屋を覗いて見たら、奴もノアールもいなかった。
布団は片付けられていて、シーツとスウェットは畳んである。
階段を降りて行くといい匂いがしてきた。
「おはよう、アラン」
厨房には、マコさんのエプロンをつけた奴が立っていた。
「マコさんのサンドイッチは弁当にしようと思って、朝食作ったんだ。アランも一緒にどう?」
「え……」
トンと目の前に出された皿には旅館の朝食のように綺麗に焼かれた鮭と卵とお浸しが載っていた。
「これ全部今おまえが作ったの?」
「うん。あとハイ、これ味噌汁」
豆腐とワカメの味噌汁。俺が一番好きな具材だ。
美味い!
と、叫ぶ代わりに俺は眉間に皺を寄せた。
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