1.猫を愛する男と猫に愛される男

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マコさんに教えて貰った通りにコーヒーを入れて持って行くと、奴は文系だった俺には全く理解出来ない化学式を見詰めていた。 「ありがとう……あ、美味しい」 真剣な横顔から振り向いて控えめな笑顔。 仕事の出来る大人の男性に見えてドキッとしてしまった。 いやいや、こいつまだ高校生だって。 「ノアールも何か飲む?」 聞いてみたけど返事なし。 ダーリンに夢中だからお構いなくってか。 仕方なく独りカウンターに戻ってゆっくりコーヒーを飲んでいると、奴が飲み終えたカップを手に立ち上がった。 「ああ、いいよ。俺が片付ける」 「ありがとう、ご馳走様」 キッチンを片付けてテレビをつけてボーッとしていると、奴は支度をして戻って来た。 「もう行くのか?」 「うん。そろそろ開門するから行くよ」 「行ってくるね、ノアール」 「気をつけてな」 さて、俺も支度するかと背を向けた時、奴が叫んだ。 「あー傘!」
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