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「いえ、規定はないと思いますけど……」
「じゃあいいじゃない。ね、次回もタダにするから許して。なんなら一生タダでいいわよ」
両肩を掴んで囁かれて背筋がゾワッとした所に別の店員がやって来た。
「おはようございます。うわっ、誰っすかこの美女、外人モデルさん?」
「えー、男の人でしょ? 超イケメン、芸能人ですか?」
日本の男性サラリーマンです。
なんて答えたらまた何ターンか面倒なやり取りになるからやめた。
「もし会社から戻せって言われたらまた来ます。その時はよろしくお願いします。じゃあどうも」
「わかったわ。どうもありがとうございました」
出口に向かったら全員ついてきた。
おい止めろ、ぞろぞろ出てきて見送られたら通行人の目につくだろ!
ほら、通行人が立ち止まったよ。
有名人でも何でもないですよ。
芸能人とかあり得ないから。
社会人になって愛想笑いは覚えたけど、ずっとニコニコしてファンと握手とか無理だから。
うん? 後ろから誰か走って来る?
何か忘れ物したかなと思いつつ振り返らずに歩き続けていると、走って来た奴は俺を追い抜いて振り返った。
「アラン? アランだよね」
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