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2.金髪にされた男と金髪で生まれた女
それから2年後の春。
タダより高いものはないという戒めを痛感しながら、俺は鏡を見て唸った。
「ちょっと明るくするだけって言いましたよね?」
「ええ。だからプラチナブロンドじゃなくてダークブロンドよ」
「いやいや、ちょっとって言ったら普通茶髪でしょ」
「あらー、でも最高に似合ってるわよ」
「ちょっ、写真は嫌だって――」
「マコさんに送るだけよ」
マコさんと仲の良い常連さんと聞いて油断した。この人ヤバい人だった。
店のゴミ出しをしている俺を見掛けて是非サロンモデルをお願いしたいとマコさん経由で頼んで来た近所の美容院の店長だ。
写真撮って晒されるのは嫌だと断ったらカットモデルでもいいと言われて、調度髪も伸びてきたしタダで切ってくれるっていうならと応じてしまったのが間違いだった。
ついでにちょっと髪色も明るくしてみないか、もちろんタダでと言われて、いいですよと答えてしまった自分を恨みながら鏡に向かってため息をついていると、マコさんから返信が来た。
「ほらあ、凄い似合うって。むしろ黒髪で生まれてきたのが信じられないくらいよ」
あーそうですか。
俺には違和感しかないですけどね。
「お仕事、デザイナーさんなんでしょ? だったらこれくらいの方がいいわよ。クリエイティブな職業の人って自分も商品でしょ? 持って生まれた美貌を利用しなきゃ損よ。心配なら私が会社に電話してあげましょうか? 当方の間違いで金髪に染めちゃったけど御社の規定に引っかかりますかって」
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