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3.本物の恋人と仮初めの恋人
俺はデートをしたことがない。
皆で映画観ようって誘われて行ったら女子が1人だけ待ってたことはある。映画自体は面白かったし、親に昼は友達と食べてくると言ってしまったから一緒に飯は食べたけれど、デートらしいことは何もしなかった。
あの時は俺が被害者だと思っていたけれど、誰が仕組んだのかわからないし、彼女も被害者だったのかもしれない。例え彼女が俺のことを好きで2人きりになりたかったとしても、ずっと迷惑そうな顔をしていられたら楽しいわけがない。
でもあの時、無理に楽しそうにしなかったのは正解だろう。
そしたら彼女は勘違いして、それ以上を求めてきたかもしれない。それで拒絶したら、もっと彼女を傷つけてしまったに違いない。
そんなことを考えながら眺めていたら、奴の背後に屍の山が見えた気がした。
もちろん小野慧治のことだ。
奴は今俺の目の前にいる。目の前で、パフェを食べている。
「アメリカにはこんなに見た目も味も繊細なパフェはないから、彼女きっと感動するよ。ねえ、そっちも美味しい? ちょっとチェンジしない?」
「嫌だ。食いたきゃもう1つ頼め」
「2つは無理だよ、お腹壊しちゃう」
ケーキならともかく、パフェを分け合うのはないだろ。
気持ち悪いとか思わないのか?
あ、でも――
「メロンと苺交換ならいいぜ」
俺のは色々載ってるスペシャルパフェ。奴のは苺オンリー。そして俺は、メロンより断然苺が好きだ。
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