第二章 森の家 二

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 まあ、確かに、何の根拠もなく犯人だと言う事はできない。俺は公安なので、つい犯人が分かればいいと思ってしまったが、捜査とはそういうものではない。 「……でも、本村も犯人に気付いたでしょう」 「まあね」  一周して再び玄関に来る頃には、霧も少し薄れてきたが、それでも周囲の景色は見えなかった。 「事件当日も、濃霧だった。家族は危険なので、家の中に閉じ込もるしか無かったが、晃は周囲を探索して、濃霧の景色をデジカメに映していた」  資料も言葉にしてみると、実感が沸いてくる。来た道を思い浮かべ、濃霧になった景色を想像してみた。細く、ガードレールはあるが落ちたら崖の道を、この真っ白な中では走れない。  この濃霧は、デジカメによると、二時間近く続いていた。警察は、その二時間を霧による、密室に近いものだとしていた。 「霧の密室、ミステリー的ね」 「まあ、徒歩ならどうにかなるから、密室ではない」
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