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すると新井は、霧はここまで濃くなると、歩いていても危険だと指摘していた。それに、霧が薄れてパトカーが走った時に、道には人はいなかった。この霧では、歩きでも山道は危険過ぎるので、密室に近いという警察の判断も間違いではないという。
「密室なら、犯人はこの家にいた事になるでしょう。それはないな……」
俺達が玄関から入ると、内薗がタオルで作った何かを引き摺って歩いていた。
「あ、夏目!」
内薗が、タオルを投げ捨てて走ってきたが、俺は内薗を避けると、飛んでいったタオルまで行った。
「ここに、四歳になったばかりの末っ子、幸多が死んでいた」
幸多は頸動脈を切られていて、他に幾つもの刺し傷があった。刺し傷は、正面から刺され、体を通過して背中に抜けていた。通過した刃物は、子供部屋の床をも刺していて、殺されたのは子供部屋だと推測されていた。
「内薗、幸多を引き摺って歩いた跡を辿っていたのでしょう?」
「そうだよ。まあ、変だったよ」
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