第二章 森の家 二

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 梯子の階段を登ろうとすると、新井がやってきて、俺を抱えて登ってくれた。  屋根裏は狭いが、棚などが置かれていて、晃が画材などの在庫置き場にしていた。アトリエが一階であるのに、物置が屋根裏など不便だと思うが、ここでも描いていたらしい。  それに、ここには端末を置いていて、デジカメのデータなども保存していた。晃にとっては、屋根裏は家の半ば外と意識していて、アトリエは見せる場所だが、絵も見せられる状態になるまでは屋根裏で処理していた。 「ここには、デジカメのデータがあって、大量の、子供達の成長記録があった。長男、長女、次男、三人の毎日が分かる程だった。でも、盗撮とかではなく、どれも晃に向って笑顔を向けていた」 「そうですね。晃は子供達に慕われていたと判断されました」  殺人に起きているのに、こんな屋根裏にいたということは、晃は逃げて隠れようとしたのだろうか。父親なのに、家族を守るよりも、自分が助かる事に専念してしまう。これが、咄嗟の判断だったとすると、いい父親だったのか分からなくなる。でも、子供を愛していたとうのは本当の事のようなので、別の理由があったということだ。 「晃は、いつも笑顔の優しい父親で、学校でも評判が良かった。地区のイベントにも多く参加していて、いい人と皆が言っていました」
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