第三章 白い森

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「有希子は、何も知らず遊んで我儘を言っている、幸多の頸動脈を切った。これは、もしかしたら偶然の事故だったのかもしれない。有希子は病院に連れて行こうとして、幸多を抱えて玄関まで走った」   玄関の外は濃霧で、何も見えない。車で運ぶ事も出来なければ、救急車を呼んだとしても間に合わないだろう。  落胆した有希子は、自分が人殺しになったのだと悟った。そして、幸多を引き摺ったまま、家の中を歩き回り、寝室に入ろうとしたが、入れなかった。そして、再度、子供部屋に入ると、息の根が完全に止まるまで幾度も幸多を刺した。  有希子は、幸多を引き摺って玄関に戻ると、完全に幸多が死んだと確信して、急に現実に戻る。 「ああ、違っていた。犬と長男に薬物を盛ったのは、攻撃されたら敵わないと思ったからだ。本村の推理のほうが合っていた」  有希子は、新一がよく飲む炭酸飲料と、犬の餌に愛用していた睡眠薬を混ぜた。
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