第三章 白い森

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 犬の首を切り落とす頃には、霧は晴れてきていて、パトカーのサイレンも鳴っていた。そこで、慌てて犬の首を持ったまま、外に出ると玄関の鍵を締めて、山に入った。  霧は雨と同じで服が塗れるので、レインコートを着ていた。だから、登山道で誰かに見られても、おかしくはない。 「誰がいたのでしょうね?」 「有希子が不安定なのに居た事と、気持ちを察して、残りの作業を続けた事から、母親だろうね」  でも、これは推測でしかない。  俺は廊下などを歩き回っていたが、階段を降りようとして、頭から落ちそうになったので、慌てた本村が背中をつまんで持ち上げていた。 「どこに行きたいの?」 「アトリエ、見たい」  本村は俺を肩に担ぐと、キッチンに行くと、片手にビールを持った。 「夏目も何か飲む?」 「ビール」  本村は、俺に麦茶を渡すと、もう一本ビールを持ち、鼻歌をうたいながらアトリエ兼サンルーフに行った。
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