第三章 白い森

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「俺にもビールを頂戴!」 「ダメ!」  くれないのならば、目の前の飲まなくてもいいだろう。本村は楽しそうで、俺は麦茶を投げ捨てようとした。 「新井さんは、何を飲みますか?」 「お茶でいいですよ。あ、お構いなく」  新井は、急須を持ってくると、自分でお茶をいれていた。  アトリエ兼サンルーフは、正面がガラスになっていて、外の濃霧が確認できた。本当に真っ白で、何も見えない。庭どころか、一m先も見えていなかった。  本村が庭に面した椅子に座ったので、俺は滑り降りると、少し窓を開けた。霧は水の粒なので、手に触れると水滴になっていた。 「新井さん、どうしてこの事件は未解決になったのですか?」  本村は、理由を知っているようで幾度か頷く。
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