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「高橋家の捜査ができなかった。殺人鬼が家に入ったという事にするしかなかったということですね。高橋家は圧力をかけた」
本村は、俺を捕まえると膝に乗せ、目の前でビールを飲んでいた。
「……そうですね。高橋の内部は調査をする事ができなかった。ここに家族がいて、全員が殺されているので、外部の犯人を捕まえろとしかなかった」
きっと、高橋家でも、有希子の母親しか真実を知らなかったので、強気に出ていたのだろう。それに、幸多が百合子と晃の子供である事を隠していたので、内部を調べられる事を嫌った。
「有希子の母親にはアリバイがあった。その日は、華道の発表会があって東京にいた」
でも、これは桂川がついでに調査してくれていて、数人が挨拶を交わしただけであった。有希子の母親には姉がいて、その姉であった可能性が高い。
「……同時期に、この山に心中で入って、女性の遺体しか無かったという事件もありまして、その青年が犯人ではないかと囁かれていました」
「新井さん的には、納得できなかった?」
新井は、曖昧に笑うと、霧を見ていた。
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