第四章 白い森 二

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 虚から出て空を見ると、キラキラとした光が差し込み、虫の声しかないような、静寂な空間になっていた。 「ロマンチックな場所だ」  夏草に埋もれて、朽ちてゆくような、ひっそりとした死がここにはある。この場所を選んだ事に不思議はない。 「……案外、家から近いな……」 「だから、犯行が疑われているのですよ」  でも、写真の女性ならば、あまりにひ弱なので、鉈で首を切り落とすなどできないだろう。 「この場所に一人、取り残される……」  縄がほどけて、自分は生き残ってしまった。相手は死んでしまっていて、どうしたらいいのかわからない。  山を降りて、警察に行ったとして、残された自分が立ち向かう事が多すぎる。まず、同姓の恋人と心中しようとしたなど、誰にも言えない。 「秘密にしようかと、迷いながら山を降りてゆく。でも、登山道には戻れずに、この山道から、高橋家に行った」  高橋家に助けを求めたが、真実は言えず、友人と山登りをしていたが、はぐれて遭難してしまったと説明をしておく。晃か、有希子に街まで送ってもらうと、家に帰る。
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