第四章 白い森 二

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 霧は、晴れる事なく濃くなってゆく。風も強くなってきたので、雨になるかもしれない。すると、霧の中に人影が浮かび、自動販売機でコーヒーを買った。 「霧で足止めですか?」 「ああ、霧ね……」  コーヒーを持った男は、西海に言われて初めて、霧に気付いたようだった。 「凄い霧だ……」  男性はスーツ姿で、出張でここに来て、少し観光して帰るかと、神社まで来たらしい。 「同僚が見つからない……」  打ち合わせで遅くなり、急遽、ビジネスホテルに宿泊したらしい。会社に連絡すると、土曜日なのでゆっくり帰って来いと言われ、ここに立ち寄った。 「土曜日?」  今日は何曜日だっただろうかと、西海を見ると、西海は少し蒼褪めていた。 「もしかして、神社のあたりで、可愛い女性がダムまで乗せて欲しいと言った?」 「……そういうことも、あったような……」
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