第四章 白い森 二

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 神社のバス停で、一日に一本しかないバスを待っている女性がいたので声をかけた。すると、街中に行くのではなく、ダムに行くのだと言った。では、ついでにダムを見て帰るから、一緒にどうぞと誘ったらしい。 「ナビをセットするから、ダムの名前を教えてもらった。すると、彼女は自分がメモしてきた紙をくれた……携帯電話で検索すると、心霊スポットで、何をしに行くのか聞いた…………すると、恋人の墓参り……だと」 「ああ、そう、ダムの途中で降ろしてくださいとか、そんな……事を言われて、でも、ダムまで来て、一緒に、買った弁当を食べた……」  どうも記憶が曖昧になっているらしい。思い出しながら喋るので、かなりゆっくりだった。 「……そう、弁当を食べ終わって、帰ろうとしたら濃霧になった」  車のエンジンをかけると、濃霧になってしまい、徐行で走り出した。すると、いつの間にか車が道を外れていて、斜面を転がり落ちてしまった。 「どうして……こんなに重要な事を思い出せなかったのだろう……消防?なのかな、呼ばないと」
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