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男性は歩き出したが、光に進んでいる気配がない。ふらふらと、ダムに戻ろうとしていたので、訂正しておいた。
「上!です!そっちは、ダム!空に向かってください」
夏に花火を打ち上げる気持ちが分かる。花火を追ってゆけば、成仏できるのだろう。でも、今、花火はない。
男性はのろのろと上を見ると、光を探していた。
「上に向ってください」
俺は、再度、指示を出すと、温くなったオレンジュースを飲み干した。
「……夏目さん、手が震えてバイクに乗れません」
西海を見ると、西海は缶コーヒーを持っていたが、口に運べないほどに手が震えていた。
「何かあったの?」
冷静な西海が、こんなに動揺するなど珍しい。
「夏目さんが平然と、幽霊と会話しているからですよ。幽霊ですよ、あれ、死んでいますよ!」
そんなに怒らなくてもいいだろう。
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