第四章 白い森 二

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 男性は歩き出したが、光に進んでいる気配がない。ふらふらと、ダムに戻ろうとしていたので、訂正しておいた。 「上!です!そっちは、ダム!空に向かってください」  夏に花火を打ち上げる気持ちが分かる。花火を追ってゆけば、成仏できるのだろう。でも、今、花火はない。  男性はのろのろと上を見ると、光を探していた。 「上に向ってください」  俺は、再度、指示を出すと、温くなったオレンジュースを飲み干した。 「……夏目さん、手が震えてバイクに乗れません」  西海を見ると、西海は缶コーヒーを持っていたが、口に運べないほどに手が震えていた。 「何かあったの?」  冷静な西海が、こんなに動揺するなど珍しい。 「夏目さんが平然と、幽霊と会話しているからですよ。幽霊ですよ、あれ、死んでいますよ!」  そんなに怒らなくてもいいだろう。
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