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男性が道路を辿って山を降りてゆくのを見送ると、遠くで悲鳴が聞こえていた。
ダムの霧が晴れると、快晴になっていた。真っ青な空には、太陽が昇っている。俺がダムを確認していると、西海は疲れて座り込んでいた。
「その姿は、天使ですからね……死者も寄ってくるということですか?全く……想定外の連続ですよ……」
死者かどうかは分からないが、事故であったと分かって、スッキリした。
「このガードレールは、事故の後に出来たものか……」
事故で死者が出なければ、ここは、いつまでも危険な場所であったということだ。
「西海、帰ろう」
「まだ、手が震えて帰れませんよ」
俺は、西海に歩み寄ると、震える手を握ってみた。西海に怖い思いをさせるつもりは無かった。それは、俺が悪かったと思う。
西海の手は温かくて、震えていても、俺の手を握り返していた。
「ごめん。怖かったよね……」
西海は、反論しかけて溜息をついた。
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