第四章 白い森 二

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 殺人現場には、仕事上、行かなくてはいけない。手を合わせて弔う気持ちは持っているが、それだけでは精神が持たない。 「ここは俺の家だ。俺が認める者以外、出て行け!」  まず、自分の領土は自分の支配下なのだと、宣言する。自分の体も然りで、霊を感じたいなどと思ってはいけない。ここは、俺の支配下で、俺は無断でいる者を許さない。 「あ、静まりました……しかも、空気が美味しい……」  でも、冷静に見ていた内薗が、窓を指差していた。窓には、びっしりと子供の手の跡が残っていた。 「俺の手ではないよ……」  俺の手よりも、大きい。内薗くらいかと比べていると、手の跡が、他の窓にも移動していった。 「イタズラなのか、面倒な子供だな」  俺の息子も、よく構って欲しいとイタズラしてきた。その時は面倒とも思ったが、可愛くもあった。愛されている自信がないと、イタズラもエスカレートしてしまうのかもしれない。
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