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オシャレは自分の為にしよう
「やめて。私は男のためにオシャレしてないし、美容も同じよ。私はオシャレが好きだからオシャレしているの。自分が綺麗になりたいから美容をやってるの」
同僚の笛木さんはかっこいい女性だ。
今も九州から転勤してきた男性社員のセクハラをばっさりと切り捨てた。
笛木さんはとっても美人で、メイクもファッションもオフィスカジュアルのフォーマル寄り。とても凛々しい美しさだ。
あれを男受けを狙ったファッションと誤解されてしまうのは、きっとそもそもが美人で男性を惹きつけるからだろう。
「おー、こわ。笛木さんって怖いねぇ。えっと、美川さん」
九州からの転勤社員はバイタリティの強い男だった。
笛木さんにこってりと絞られた後なのに、今度は私、美川に話しかけてきた。しかも、ついさっき粉をかけたばかりの笛木さんの悪口が話題である。
「あ、いえ、笛木さんはかっこいい……です。その……私には真似できませんけど」
「そーだよねー。美川ちゃんみたいないい子にはああいうトゲトゲしたことはできないよねー」
私では笛木さんに及ばないという意味での返答を、転勤社員は自分への同調と解釈したらしい。馴れ馴れしい口調で話し続ける。
私は困惑したまま、強く拒絶することもできずにおしゃべりに付き合わされることになった。
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