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「なんで……、一年前に会ったときはピンピンしていたのに」
最初に身じろぎしたのはオスカーだ。
「あの、殺しても死ななそうな親父が」
「いつ。いつ死んだの?」
マリアンヌはじっとカリーナを見据える。
「約二か月前です。時間がかかってしまい、申し訳ありません」
再び頭を下げるカリーナ。酒の入ったグラスをテーブルに置いてエリオットが言う。
「確かあんたは隠居した親父の世話をしてくれていたんだよな」
「はい。ある村の屋敷でお世話をさせていただいていました」
「そうか。世話になったな。何年も会っていないとはいえ、奴がいないと俺たちはこの世にいない。なぁ、そうだろ」
エリオットの目配せにオスカーは頷く。
「ああ、親父には感謝しているよ。娼婦館に売られるところだった母さんを救い出したのは親父だからね」
「うちの母親も強姦に襲われそうになったところを助けられたそうだよ」
マリアンヌも思い出したように話す。
「うちにはそんないい話はないがな。でも、あの親父が財産を残していないはずがないよな。そもそもその件で俺たちを集めたんじゃないのか?」
「その通りでございます」
エリオットが探るように言うと、カリーナは一通の手紙をポケットから取り出した。カリーナは良く通る声で読み上げ始める。
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