今夜は月が綺麗ですね

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U君の方は何やらあたし達2人と空を交互に見て、考えている。 S君はわくわくしながらU君の方を見ている。 そんな2人のちぐはぐさ、あたしは好きよ。 「じゃ、オレは先帰るよ」 「え!? お、おいU……」 あらま急展開。慌てるS君をニヤニヤしながら一瞥、あたしにそっと耳打ちした。 「M美。こういう時は『あたし死んでもいいわ』だぜ……上手くやれよ」 「あー……」 そういうことね。 残念S君、U君は貴方があたしのことを好きだと勘違いしたわよ。 馬鹿ねぇ。二人きりの時に言わなきゃ。 だからいつもあたし達にバカバカって言われんのよ? 「……じゃ、頑張れよ」 そう言って爽やかに立ち去った後に残されたのは2人。 告白に失敗した哀れなアホと、モブなあたし。 「ちょっ……ええぇぇ」 頭を抱えてしゃがみこむS君の尻を思いきり蹴り飛ばした。 「いってぇぇぇっ! 何しやがる」 「さっさと追いかけなさい」 そして今度こそ本人に言ってあげなさいという意味を込めて。 「っ! お、おぅ。分かった、ありがと!」 彼は太陽のように笑うと、走って行った。 (あー、残念) そう内心呟きながら空を見上げる。 せっかくの月が見られないなと思いながら。 「……あ」 黒い雲の切れ間から月明かりが差した。 僅かな月明かり。あたしは家路を急ぐ。 幼馴染達の恋もこれくらい光が差せばいいけどね。
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