2週目

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「元ちゃんの方が人間ぽくていいけどな」 私が高台くんを格好いいと言う度に、奈々もそう言うのだった。『元』ちゃんとは亀田(かめた)元司(げんし)の事で、高台くんのグループにいる一人で、高台くんと、幼なじみらしい。明るく、ノリの良い人で、高台くんとは真逆ような性格なのに、なぜか仲はいいらしい。いつも一緒にいる。亀田くんがずっと喋ってるのを、高台くんがクールに相槌を打っている。 それを、私は見ているのだけれど。 いつも通り、格好良かった。  いつも通り、目も合わない。 全くの他人だ。 いいんだ、別にああやって、週に1回、30分にも満たない、短い時間でも、同じ空間で同じ空気を吸ってるだけでも有難いってもんだ。寒くなった気がした、左側の肩と腕を擦って暖めようとした。ふぅと、小さなため息が出た。隣に居たなんて信じられない。 木曜日を心待ちにしていた。隣に座って、他愛もない会話を交わすあの時間が、早く来たらいい。 そう思った。
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