1574人が本棚に入れています
本棚に追加
/169ページ
だけど、とても優しい。高台くんの独特の空気はとても優しい。
私の視線に気づいて、高台くんが不思議そうな視線を返してくる。
「横顔、やっぱり、カッコいい」
「はは!」
あ、声だして笑った。思わず見とれる。
「横顔の話もしたね」
「うん、金曜日の渡り廊下で横顔見せてくれた!」
「化学の益井先生に、『成長期ですから』って言えた」
「嘘!? 言ったの!?」
「うん、たまたまね、『デカイな』って言われて。言えて良かった」
「あはは! その場にいたかったなぁ」
「うん」
「花の名前も沢山教えてくれたね」
「うん」
「楽しかったね……」
「うん」
今日で……最後。今までありがとう。その言葉を言おうとした、その時に……思い出した。
『伝えたい事があるって言ったよね』
高台くんはそう言った。身長でも体重でも、スリーサイズでもない。ふざけて遮ってしまったことに気づいた。
いつもそうだ。あの『次で最後』って言われた木曜日だって、私がまくし立てるように話さずに、高台くんの話をちゃんと聞けていたとしたら、あと何回か木曜日に会えたと言うのに。
もったいない事しちゃったのは、私のこの、性格のせいだ。
本当に今日で最後。後悔はしたくはなかった。高台くんは、いつも私の下らない話だってちゃんと聞いてくれる人だから。
最初のコメントを投稿しよう!