卒業式

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「……嬉しい」 珍しく、にこっと笑った顔をずっとそのままにした高台くんがそう言った。小さな声だったけれど、私にはちゃんと聞こえた。 「私も嬉しい」 多分、私の方が嬉しい。だって、物凄く嬉しいんだもの。高台くんが『一緒だ』って言ってくれなかったら、何の“好き”かピンともこなかったくらい信じられない。 「……一緒だ」 高台くんは、また……そう言ってくれた。 ずっとずっと遠くから見ていた。3年間皆勤賞貰えるくらい毎日見ていた。手が届かない高い高い所にいる人で、それはもう芸能人より遠くて、神の域にいるような人で……だからこそ、アポロンってあだ名で、みんなの憧れで…… その人が、私を、こんな、告白さえされたことのないような私を……好きだって言った。 だから、本当は高台くんも大した事ないんだ。だって、こんな私を好きになるくらいなんだから。 普通だ、普通の高台くんだ。今やっと、本当の意味で彼の隣に座れた気がする。 普通の高台くんの隣に。 「正義も変わってるなぁ」 「俺? そうかな、初めて言われた」 またしてもハジメテを頂いた。 「いや、正義に面と向かって『変わってる』なんて、言えるわけないでしょ」 「……今、言ったよね萌香」 「本当だ、ごめん」 「謝られると、傷つく……」 「……違うよ、それはそれは、たくさんの人から告白されたというのに、私……」 「うーん、どのみち選べるのは一人だから、結果としては同じじゃない?」 「……誰を選んでも、そうでしょ、正義の場合」 「……他の人を選ぶと、萌香の方の結果が変わってくるね」 ……本当そうだね。
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