卒業式

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──── 「わぁ、満開だねぇ」 今年も桜色になった空を見上げてそう言った。物凄く綺麗。人混み、雑踏。それなのに、みんな足を止める。 「桜ってさぁ、見上げると……金木犀の匂いがしない?」 「は? 何言ってんの、萌香。季節真逆でしょ」 「あはは、だよね」 「萌香って、金木犀漢字で書けたよね」 「んー、そう、高校の時から書けたよ」 「凄いね、好きなの?」 「うん、桜と同じくらい……好き」 「そっかぁ、いい匂いだよねぇ。あ! 行こう、お昼休み終わっちゃう」 桜の花びらがひらひらと柔らかく、暖かい春の風に優しく舞った。 受け止めようと差し出した手をスッと掠めて地面へ、ひらりと落ちた。 初恋の桜色。私だけに香る、金木犀の香りを背に、私はそう言った彼女の後を急いだ。
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