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はじまり
胸に付けたピンクのリボンの造花には“祝入学”の文字。彼も同じ1年生……か。入学式の手伝いに来た上級生かと思った。
大人っぽい、聡明な顔立ち。綺麗に着こなした制服。
今まで見たどんな男子より、身のこなし一つ取っても……とても綺麗で私はずっと、彼の事を見ていた。彼の肩の花びらがいつか無くなっても、ずっと。
自分のクラスの教室に入ると、すぐに分かった。“同じクラス”だと。
同じクラスではなくても、私は彼を知ることが出来ただろう。それほどに彼は目立つ人だった。
陽気な性格でも、何かするわけでもないのに、彼はそこにいるだけで、目立っていた。むしろ性格は物静かな人だ。教室の真ん中あたりの席。
綺麗な目は伏せられる事が多く、賑やかな友人たちに時折頷く。
格好いいというより、綺麗に近い。白い肌は、クールさも手伝って青白くも見える。頭の良さが外見にも出ている。そんな顔立ちだ。
他のクラスからも、彼を一目見ようと入学式から1週間程は廊下が賑わった。
彼はそんな事を気にする素振りもなく、まるで女生徒達が見えていないかのように
前を通りすぎた。
彼と話すのは、一部の男子と、用事のある人だけ。なのに、あっという間に彼は学校中の有名人になった。
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