エマをもつむすめ

|翼をもたぬ者《ノル・ズー》の昔語り

卵祭りに行くのかい？
なら、私たちについておいで
この辺りは危ない……

このネルデをごらん
この子はあの年の卵祭りから帰る途中
もらったばかりの卵をさらわれちまった
ほら あそこにある小さな洞窟で
最後の宿りをとった時……

夜中に大きなイザリ虫がやってきて
入口の一番近くにあったこの子の卵をくわえて
あっという間に走り去ったのさ！

ここにはそういう恐ろしいモノがたくさん出るんだ
命があっただけ めっけもんだったよ

エマをもつむすめは特に用心しなければ
飢えた翼をもつ者(ラ・ズー)に犯されてしまう
こんな所にエマをもつむすめ(ラ・エマ)がいるはずもないけどね……

ごらん　この裂け目
この下がエマニの原さ
お前も聞いたことがあるだろう？
落ちたら決して戻ってくることのできない裂け目
そう、翼をもつ者(ラ・ズー)を除いては……

この裂け目に卵を落としてしまった者もいるよ
不思議なことに、卵はまっすぐ落ちていかずに
ゆっくりゆっくり円を描きながら遠ざかっていったというよ
はるか下には黄金のエマニの原が見えたって……

そんな卵はどうなるのかって？
さあ　割れていなければ誰かが育てているのかもしれないね
そういえば　この裂け目から
ラ･ズーが飛んでいくのを見たという者もいるよ
そのラ･ズーはどこへ行ったかって？