夜の勉強

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 知識って……そもそも、何で僕の母親がそういった知識を持ってるって言うんだ?  そんな疑問がぽんと浮かんだその時、机の上のスマートフォンが震えた。着信の相手は……。 「げぇっ」  母だった。  あの性格だ、無視してもまたきっと掛かってくる。僕は渋々、通話ボタンをタップした。 「もしもし……」 『もしもし! 今、話せる?』 「うん」 『そう、良かった……実は、昼間にちゃんと言えなかったことがあったから』 「何?」 『ほら、私ね、お見合いの時にちょっと強引だったでしょう? ごめんなさい。謝罪するわ』  まさか、母から謝罪されるなんて夢にも思わなかった。僕は一瞬黙った後で口を開く。 「……良いよ。その、結果的に良い方向に転んだんだし」 『そうね! 本当に素晴らしい方に進んだわ!』  母の息が荒い。 『実はお母さんね……いつか自分の息子が、彼氏を連れて来ないかしらってずっと夢見ていたの! だからいろいろ言ってあんたたちをくっつけたくって、無理なことを言ってしまったのよ。家の改装のこととか』 「……は?」 『そういう……そうね、お母さんはつまり、そういうのが好きなの』 「言ってる意味が分からないよ」 『分からなくて良いの。そう、分からなくても……うふふ』  どうしよう。自分の母親のことが理解できない。  その後も母は「実は私は年下が攻めるのが好き。内緒よ」とか何とかいろいろひとしきり話した後、満足したのか通話を切った。僕は溜息を吐いてからスマートフォンを充電器にセットして、お風呂の用意を手に部屋を出た。
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