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「ふー」
髪と身体を洗って、湯船につかると一日の疲れがじんわりととろけ出る。僕は両腕を上に伸ばして、ぽきりと骨を鳴らした。その時。
「空」
「っ!? は、はい!」
ドア越しに声を掛けられて、思わず心臓が跳ねた。敦史さん、どうしたのかな。疑問に思って「どうかしましたか?」と訊ねれば、彼はとんでもないことを口にする。
「一緒に入りたい」
「な……!?」
「駄目、か?」
落ち着け、僕。
そう、男は裸と裸の付き合いで絆が深まるんだ……きっと。それに「恥ずかしい」だなんて言う方が何だか余計に恥ずかしい。僕は腹を括って「良いですよ」と答えた。
しばらくしてから、敦史さんが浴室に入ってきた。腰にはタオルが巻かれている。本当に全裸だったら目のやり場に困ったからとりあえず一安心だ。
「あの、背中を流しましょうか?」
何か話さないと、と考えた結果、僕は思いついたことを言った。こういう時、洗い合いっことかしたら距離が縮まるよね。
敦史さんは驚いたような顔をして固まってしまった後、ちょっとだけ照れ臭そうに頬を掻いて言った。
「それじゃあ、頼もうかな」
「任せて下さい」
僕は立ち上がり湯船から出た。けど。とんでもないことに気が付く。
ああ、僕、タオル巻いてない……!
けど、時すでに遅し。敦史さんは目をさっと逸らして壁の方を向いた。ああっ、僕の馬鹿!
き、気にしないぞ! 男同士だし! 恥ずかしくなんか無いし!
そう開き直って、僕はボディタオルにボディソープをたらりと垂らした。
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