エピローグ

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 高級三ツ星ホテルのレストラン。並ぶ料理は名前が分からないけど、どれも最高の食材を使っているんだろうなって思う。夜は、夜景が綺麗な部屋を取って、それから……。 「せーんぱい! 何を見てるんですか?」 「っ!」  僕は慌ててスマートフォンの画面を暗くしてポケットに仕舞った。須田はにやにやと笑いながら僕の肩を揉む。 「もしかして、クリスマスのデートプランを考えているんですか? 例のお見合いの人との!」 「……違う。暇つぶしに見てただけ」 「あー。でも、そうでしょうね。そのレストラン高いって評判だから、先輩のお給料が飛んでっちゃいますもんね」 「うるさい」  僕は鞄からお弁当箱を取り出して蓋を開けた。今日は失敗せずに作れた自信作だ。試しに玉子焼きを箸で取って口に放り込んでみた。うん。美味しい。敦史さんも、今頃食べてくれているかな。 「飽きずにお弁当作り続けられますね。偉いなぁ」 「……健康のためだよ」 「野菜もバランス良く入ってるし、先輩は良い奥さんになれますね!」 「な……奥さんは無いだろ」  須田を無視して昼食を進める。けど、奴は横から勝手にぺらぺらと話し続ける。 「そういえば、先輩、最近は何だか色っぽくなったって噂ですよ」 「ぐふっ!」  思わずむせてしまった。色っぽい? 僕が?  須田の顔を見れば、またもや、にやにやと口元を緩めていた。 「もしかして……未知の体験しちゃいました?」 「な……!」 「先輩は表に出やすいんですね。女子社員が騒いでましたよ。色気がダダもれてるって」 「し、してないし!」 「はいはい。そういうことにしておきましょう」  待て! と須田の手を掴もうとしたが、ひょいと逃げられてしまった。ああ、もう……。  財布を手にフロアを出て行った須田の背中をぼんやりと眺めながら、僕は一刻も早く敦史さんに会いたい気持ちでいっぱいになった。
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