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僕が理由を尋ねると、敦史さんは照れたように頬を掻いた。
「実は……クリスマスディナーを空と一緒に作りたいんだ」
「クリスマスディナー? それって、チキンを焼いたり、ハムでこう……野菜を包んだり?」
「ああ、そうだ。俺はお菓子作りは得意じゃないから、ケーキは買おう。しかし、食事は空と作ってみたいんだ」
「でも僕、玉子焼きくらいしか自信が無いですよ」
「それで良い。上手く作ることよりも、空と一緒にすることに意味があるんだ」
ちょっと心配だな。でも、一緒にお料理デート……きっと楽しい。
僕は「分かりました」と頷く。敦史さんは、とても嬉しそうに笑った。
「ディナーの後は、映画を観よう。実は、もう買ってある」
「ええっ。敦史さん、感動系のやつばっかり用意するから……」
「空の泣いている顔が可愛いから、つい」
「っ……! も、もう!」
くすくすと笑い合って、テーブルの上で手を繋いだ。敦史さんが微笑む。
「空、ありがとう。俺を好きになってくれて。俺はもう、すっかり空に染まっている」
「そんな……僕の方こそ、もう敦史さんの色に染まっていますよ」
「同じ色に?」
「同じ色に」
見つめ合って、キスをした。
触れるだけの、優しいキス。
きっと、これからも、こんなあたたかい時間が続いていくんだ――。
「愛しているよ、空」
とろけるような甘い声に、僕はもう一度目を瞑った。
敦史さん、僕はずっと、あなたに染まっていたい。
もう一度降り注ぐキスに、僕は身を預けた。
愛情たっぷりのくちづけで、僕たちは甘く甘く、同じ色にもっと濃く染まっていくのだった。
<了>
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